【おまけ】グランドキャニオンで意思決定トレーニング #18

「人生とは旅であり、旅とは人生である」

これは中田英寿選手引退メッセージのタイトルで、いつも心の底に流れている言葉。

この記事はグランドキャニオンの1500m崖下で死にかけた話のおまけだ。

前回は、わかりやすく伝えるためにストーリ調で書いたが、その裏で普段から実践しているのが意思決定トレーニングだ。記事の内容はもちろんすべて事実だけど、実際のところ不用意なミスで危険な目にあったというよりは、わざわざ自分を追い込んでいたのだ。

人生も旅も、本質は先の見えない冒険だ。予想外のことも起きるし、ギリギリの意思決定が求められる。なので僕は、旅に学び、成長につなげるべく意思決定トレーニングを実践している

意思決定トレーニングについて

旅の最中はわざとこのようなハプニングが起きる環境に身を置くようにしている。いい感じにバスが来たら乗ってしまうし、良さそうな川を見つけたら、とりあえず向かってしまうのだ。ハプニングに出会うために。

一人旅においては、情報は足りなくて、協力者もいない。基本的に無力だ。その中でどのように生き抜くか、どうすれば目的を達成するか、極限な状況に追い込まれても冷静で正しい意思決定をできる判断力を育てていくのだ。

人生や経営は旅以上に未知な冒険である。進学・転職・結婚、起業や重要案件など、意思決定を前には誰もが不安で、情報やリソースは常に不足している。

そんな中、いかにベストな意思決定をするか?

旅はそんな未知の状況で意思決定し、結果を反省し成長に活かせる格好のトレーニング場だ。

川を目指すという意思決定

今回、大きな分岐点は、「⑤聖なる川」でルートの間違いに気づくも、川を目指すという意思決定をしたときだ。その前もバスに飛び乗ってみたりはしているが、この時まではただの気楽な観光だった。限られた情報のなか、それでも川を見に行きたい。そう思う人は1%もいないかもしれないが、子供のような本能的な気持ちに素直に乗っかる人もいる。僕みたいな人だ。そしてトレーニングのためでもある。

ある種の変態かもしれないが、挑戦に成功する人は、きっと川を目指すタイプの人だ。

僕の経験でいうなら、

①大学を卒業時、不安もあったが就職せず起業の道へ。
→地獄を見たが、結果的に15年成長を続けている。

②iPhoneが不発だと言われる中、未来を感じていち早く開発に投資。
→必死に実績を重ね「アプリ開発実績」でgoogle検索日本一位を獲った。

③オフィスが手狭になり、倍以上で月額350万の新オフィスに思い切って移転。
→経営危機に陥るも、3年後にはそのオフィスも手狭に。

などの意思決定をしてきた。

結果論で見ると楽観的ノリで飛び込んだだけと見えるが、現実は人生を賭けて多額の借金を負い先の見えない不安で夜も寝れない中での、ギリギリの意思決定ばかりだ。

孫正義は、「7割の成功率が予見できれば事業はやるべき。5割では低すぎ、9割では高すぎる」といっている。ビジネスの世界では、情報が完全に揃って状況が見通せるようになってからでは遅すぎる。イケるかも、面白そうでいち早く飛び込んだ人達が、その場その場でなんとか乗り越えいち早く成功し、皆が気づいた頃にはすでに次の挑戦に向かっていくのだ。

ふらっと立ち寄ったグランドキャニオンでは、現地の人に比べて圧倒的に情報量が限られていた。情報が限られており、リスクがあるなかで、ギリギリの意思決定を下すという経験は、なかなか普段から経験できない。情報がないグランドキャニオンで目標を達成するためには、質とスピードを兼ね備えた直感的な意思決定が必要になる。

冷静と情熱のあいだ

勇気と無謀は違う。ただノリだけでどこにでも飛び込んでいく人はすぐに命を落とす。

実際に⑤で川を目指すのを決めるときには

・地図で見る限り、帰ってこれる距離
・自分の登山実績からも大丈夫という判断
・地図を見る限り観光用に整備されていそうな道
・周りにちらほらと登山客もいる
・他の人が重装備でいける道なら軽装の自分なら大丈夫だろう

ということを判断材料に意思決定をした。

もし今回のケースで命を落とす人がいるとしたら、

「⑥迫る危機」で3時間下ったあたりで怖くなり、引き返して途中で力尽きて夜になる
「⑦登山口での葛藤」で勢いに任せて一気に登るが水不足で力尽きて夜になる

のどちらかだ。不安にかられて冷静さを失ったときが一番意思決定を誤る。

稲盛和夫は「楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する」と言う。

川を目指すところは楽観的に構想し、実行に移すが、その節目節目で、悲観的な計画を挟むことが重要で、⑥や⑦登山口の葛藤においても、常にその時点までに得た情報をフル動員して計画を悲観的に冷静にアップデートし続け、必ず成功できる道を選ぶのだ。

また、最悪は野宿で夜を明かしたり、救助隊のお世話になることなど、ワーストケースを受け入れる悲観的な「覚悟」も決めておく必要がある。(これまで20回以上はこのようなトレーニングをして一度も救助隊やそれに類する迷惑をかけたことは無いが、最悪の場合は躊躇せずに頼ることも大事なことだと思う)

そして引き受けられるリスクは負うが、それ以上に危険なことはもちろん避ける。

たとえば、

・エベレストにノープランで昇ったりしない
・太平洋を1人カヌーで渡ったりはしない
・デモ渦中の香港は見に行くがデモには近づかない
・スラム街を歩くが観光客風じゃなくボロボロの格好で。

などだ。感覚値になるが、死亡リスクが1%以上あることには絶対に近づかない。

また、いきなり無謀なことに挑戦するのでなく、これまでに何十回とこの種の体験を繰り返し、少しずつ難易度を上げていってるので、安易に無謀な挑戦をしているわけではない。

検証と反省

「人間は失敗する権利をもっている。
 しかし失敗には反省という義務がついてくる」

と本田宗一郎は言う。失敗から学びに活かすことが成長である。PDCAともいう。

自分の場合、⑦の時点でわからなかった情報は、

このルートは登山に何時間かかるのか?
この登山道の途中に水はあるのか?
一杯も水を飲まずに1500mの登山は可能か?

の3点である。

それを検証するため、翌日の登山では、水は携帯はするが一杯も飲まず、そして1度も休憩せずに、自分の体力を検証した。結果として、飲まず休まずで4時間10分で登り切ることができた。登ってみたら帰りのルートはかなりのeasyコースで水が飲める休憩所も3箇所あり、歩きやすかった。行きのルートがあまりにもhardコースで危険だったのだ。

つまり、あの時に日帰りを選択し、一気に登ったとしても成功できた可能性はたかい。しかしそれは結果論で、あの時点の情報量の中では、無謀と思える意思決定するべきではなかった。

そして、「登るのもありだった」という結果をインプットすることで、直感力は鍛えられる。

先送りは最悪の意思決定

今回、いちばん緊張したのは⑦の昇るかどうかを意思決定するタイミングだ。何しろ山の夜は早い。まだ昼過ぎだったとしても、昇るなら一刻も早く意思決定しないといけないのだ。

誰もが意思決定を先送りしたがる。先送りすれば情報が増え成功率が上がるし、決定には責任が伴い怖いからだ。今決めたほうがいいのに、「来週の会議の反応を見てから・・」「少し様子を見ながら・・」などついつい易きに流れるように先送りしてしまう。

しかし、今決めないというのも1つの意思決定なのだ。例えばうちの会社は月間1億規模の経費を使っている。ということは1日300万だ。1日意思決定を遅らせることは、300万円を無駄に捨てるようなものだ。先送りせず今決めるべきだ。先送りは最悪の意思決定だ。

「あなたはいま意思決定しますか? する or 先送りする」

というプッシュ通知が1分おきに届くとしたら、先送りする人はだいぶ減るだろう。意思決定が早い人にはこの脳内通知が毎秒届いており、一分一秒でも早く意思決定をしている。

リスクと付き合う人生を

今回の行動はほとんどの日本人に共感されないだろう。

「なるべく危険な行動は避け、周囲に迷惑をかけないよう、安全を第一に」

という正論に従うことで、多くの人は幾百の素晴らしい体験をあきらめている。登山家や冒険家が遭難し救助されるときには非難罵声が飛び交う。

それでも、人生は一度きり。

飛行機に乗らなければ墜落することはないかもしれないけど飛行機で死ぬリスクはたった10000000分の1。今年、あなたにガンが発覚するリスクは100分の1。リスクは生きている限り身の回りに溢れている。

例えばあなたが旅先で突然津波に襲われ、過酷な自然環境と見知らぬ人間社会の中に置かれるリスクも意外とありえる。そのときに備えるには、リスクを避けるのではなく、リスクと付き合いトラブルの中を生き抜く力を付けておきたい。

リスクと付き合うことで、素晴らしい体験や、成長が得られるのであれば、受け止められるリスクは積極的に引き受けて、楽観的に挑戦していこうというのが僕の考えだ。

旅も人生も、踏み出せば道があり、仲間ができ、感動がある。

一歩踏み出す勇気を、僕は旅のなかに育てている。