コインハイブ(Coinhive)事件の意見書を公開します #23

最近ハッカーRADIOというラジオ番組をはじめたり、Youtubeつよつよちゃんねるを開設したりと「外交」を増やして良かったことはいろんな情報が入ってくることだ。

コインハイブ事件については、「へ〜なんかビットコインで悪い人が捕まったんだ」ぐらいに捉えていたが、一緒にラジオをやっている池澤あやか氏が怒っているという情報を聞き、Youtube番組内(今さら聞けない! 池澤あやかに聞く「コインハイブって何が問題?」)で詳しく聞いてみたところ、「たしかに警察やりすぎ」という印象。さらに一個人でしっかりと意見表明する池澤氏に勇気をもらったので、ここにブログ投稿&意見書も公開・提出する。

事件のカンタン説明

サイトに来た人のPCを無断利用して仮想通貨を稼げるのがコインハイブ

といってもそんなにたくさんは稼げない。数千円レベル

そんなにPCも重くならない。(重くなったら二度と見ないし)

なのに警告もなく「いきなり逮捕」された人が22名

うち1人のモロ氏が簡易裁判の判決を拒否し地裁へ

地裁は無罪獲得。高裁は逆転有罪。舞台は最高裁へ

ハッカー協会が4/1まで意見書を募集。まとめて最高裁に送る 
↑イマココ

ズバリ結論

捕まった人は確かにちょっと悪い

でも、逮捕するレベルのものではない

Apple審査やgoogleのブラウザ改善など、民間レベルで対処されるもの

これで逮捕ならエンジニアの萎縮と技術衰退の恐れあり

そして警察や裁判所への嘲笑をまねく恐れあり

<意見書>

裁判関係者の皆さま、お忙しいところに本文をご覧頂き誠に有難うございます。

僕はエンジニア社長としてbravesoft社の経営を行っており、この判決の影響を受けるものです。

bravesoftは創業15年で150名、アプリやWEBサービスの開発を行っております。

これまで開発したものは首相官邸やアメリカ大使館、東京大学やJST、NICTなど公共団体のものからTVerやボケて、ベネッセ様や東京ゲームショウなど民間のものまで1000件以上に及びます。

コインハイブはたしかに技術のよろしくない活用例だとは思いますが、今回の判決で有罪にしてしまうことは大変危険なことです。

「この程度のこと」で逮捕されるとなると、エンジニアとしてはリスクを避けるために多くの開発案件を拒否せざるを得ません。

コインハイブで受ける閲覧者の不都合(PCが重くなる)は軽微な不都合です。そしてPCが重くなるサイトは自然と使われなくなります。

こういった利用者に不都合をあたえる技術はgoogleなどのブラウザ開発者やまとめサイトなどから支持されないために、自然と淘汰される事例をこれまで何度も目撃してきました。

「この程度のこと」というレベルを技術がわからない方に分かりやすく伝えるなら、テレビ番組が広告と明示せずにスポンサーの商品を紹介したら逮捕されるようなものです。どこまでが広告でどこまでが本当なのか?スポンサーのイチオシの服をドラマのヒロインが着ることは悪なのか? その線引は曖昧故に、今回有罪になると今後我々エンジニアは多くの開発を拒否せざるを得なくなるのです。良くない番組は自然と淘汰されます。そこに警察や司法は必要ありません。

視聴の対価を払う方法には、広告、課金、そして今回のようにPCリソースの提供などいろいろあります。それぞれの対価を払う方法でサイトを見ている時点で、「意図」に沿っていると言えると思います。嫌ならもう2度と見なければいいだけです。

それを明示するのか明示せずに行うのか、もちろん明示したほうが良いと思いますが明示しなくても「逮捕されるほどの不正」では無いと思います。

創業当初より「技術で社会に貢献する」という思いで真摯に開発に励んでまいりました。社会にもそういう真っ当なエンジニアが大多数で、悪い人が長期的に反映することもありません。

技術革新は常に「なんか怪しい、大丈夫かこれ?」から始まります。

例えば、

LINEは勝手に友達の電話番号を友達候補リストに表示しています。
スマートニュースは勝手に新聞の記事をコピーし表示しています。

どちらも僕は「これ大丈夫か?」と思いましたが、一般に受け入れられて、多くの人を幸福にしました。大丈夫かどうかは民間が自主的に判定し、ダメなものは民間が排除するメカニズムがあります。今回程度の行為が法的にダメという判例ができれば、多くの新規プロジェクトがリスクとなり開発そのものが開始されません。

いま、今後の日本の技術革新に大きな足枷となる判例が生まれることを恐れています。

そしてもっと恐れるべきは、警察や裁判所へのエンジニアや国民の不信感や嘲笑です。

日本人はなんだかんだいって警察や裁判所を信頼しています。

逮捕される人は悪い人だと信じています。

刑罰そのものよりも「逮捕」という風評により生きづらくなるのを恐れています。

この警察や裁判所への信頼・逮捕への恐怖こそが世界No.1の平和的国家を実現しています。

僕が「コインハイブで悪い人が捕まったんだな」と当初感じたのは警察を信用してたからです。

この判決により「逮捕された人はそんなに悪くないかもね」「むしろ勇者でカッコイイじゃん」

に人々の意識が変わることを恐れています。

我々が警察や裁判所を信頼しているように、ぜひ皆さまも我々民間を信頼してください。

コインハイブはよろしくない技術だと思いますが、法的には無罪で良いと思います。

少しでも参考になれば幸いです。
よろしくお願いいたします。

菅澤 英司
菅澤 英司
bravesoft CEO&つよつよエンジニア社長です。よろしく!