さあ、断食の旅に出よう #10

なんだかんだで飽食の時代だ。

連日の飲み会はご馳走に溢れ、生きるためというよりも、楽しむために食べている。

馬車馬のような食生活にちょっとした疲れを感じている人は少なくない。そんな人にぜひ試してほしいのが今回紹介する「断食」だ。最近では「ファスティング」なんて呼ばれたりしてちょっとしたブームになりつつある。

そして過剰摂取になっているのは食だけではない。僕らは知らず知らずのうちに「情報」も食べ過ぎてしまうために、ココロも疲労困憊気味である。そこで、ついでに都会から離れ自然の中で過ごして、溢れかえっている「情報」も断ってしまおう。

それが「断食の旅」だ。

どんな感じでやるのか

僕の場合は週末に3泊4日の「断食一人旅」に出かけることが多い。その3日間は一切食べない。金曜日は仕事があるので、断食しながら仕事して、金曜日の夜に旅に出かける。そして月曜は旅先から会社に出勤というスタイルだ。

旅の日程はこんな感じだ。

▼金曜日
いつも通り仕事をする。ただし何も食べない。なるべく早く仕事を切り上げ、自然豊かで夜遅くまでチェックイン可能な旅館で一泊

▼土曜日
自然を歩きながら考え事をしたり、本を読んだり。何も食べない。あまり疲れる行動は避け、のんびり過ごす。夜は山奥の静かな旅館で一泊

▼日曜日
土曜日と同様。翌朝は出勤なのでなるべく会社に近くて自然もある旅館を選ぶ。

▼月曜日
旅先から会社へ出勤。体重はだいたい2kg減。ココロもカラダもすっきり!

以前に書いたアジャイル旅行とも組み合わせて、このような「断食の旅」に2ヶ月に1度ぐらいは出かけている。

以下、ポイントをまとめてみた。

意外とつらくない

これが不思議に思うかもしれないが、食べたいけど必死に我慢して・・という局面はまったくない。旅館の部屋にあるお菓子さえまったく手を付けたいと感じない。最初から「食べない」と意思決定しておくと、食べたいという気持ちが沸き上がってこないものなのだ。その代わり体中がポカポカして、脂肪の燃焼が感じられる。これは感覚的な表現になるが、「自分を食べる」モードに切り替わっただけなので、お腹は空かない感じなのだ。(普段が食べ過ぎというのもあるかもしれない)

飲み物はたくさん飲む

コンビニで売っている野菜ジュースと調整豆乳を一本ずつ飲む。1日に必要な栄養が補給され、空腹感を抑える効果があるらしい。断食中は脂肪燃焼によって新陳代謝が活性化し、毒素の排出のために水分が必要となるらしく、かなり喉が渇くので、水分を取り続ける。1日2〜3リットル程度は飲んでいる。

食べたい気持ちはココロから

3日間食べなくても平気な経験をしてみると、逆に普段はなぜ空腹感を感じるのか不思議になってくる。「ストレス太り」という言葉もあるように、人は動物的本能から、ストレスや不安を感じると食欲が高まり、食欲を満たすと安心感を得られるようになっているらしい。そう、飽食の時代でもなお、もっともっと食べさせようとしてくるのは、カラダではなくココロの渇望なのだということが実感される。

意思決定からの開放

もうひとつ感じるのは、人はいかに「食べる」ということにココロを奪われているかということ。街を歩いているとき、コンビニに入ったとき、テレビを眺めているとき、絶え間なく流される食の情報に、「いつ食べようか、これを食べようか、いや他を食べようか、あとで食べようか、やっぱり辞めとこうか・・・」などど、無意識下で毎分のように意思決定を迫られているのだ。意思決定はストレスのもとである。「今日は食べない!」という意思決定をまずしてしまうことで、1日の意思決定回数は相当数省略され、ストレスフリーな一日を過ごすことができる。たとえば街を歩いている時、飲食関係のお店や広告が一切目に入らなくなったとしたら、そこに見える景色はまったく違うものになるだろう。

脂肪のような情報を断つ

ココロも減量させるために、出来る限り日常の情報に触れないようにする。自然豊かな場所にたった一人で出かけるのはそのためである。スマートフォンは使うものの、いつも使っているSNSや仕事アプリは目に入らない場所に移動させて、1日に数回しかチェックしないようにする。できるだけ日常の情報を断って、溢れかえっていた情報をココロから排出する(→忘れてしまう!)のである。2,3日情報を断ったとしても、本当に大切なものは残る。脂肪のような情報は排出され、骨や筋肉のような大事な情報が残り、スマートなココロになれる。

100円おにぎりに感動

空腹は最高の調味料という言葉もあるが、3日間なにも食べなかった後の100円おにぎりは表現できないほどに感動的な味わいだ。断食後の味覚は研ぎ澄まされており、ちょっとした味付けでもいつもの何倍も濃いと感じる。胃は縮小されているため、おにぎり1個でもお腹いっぱいになり、2,3日間は小食な状態が続く。長く生きていると食べるということに無頓着になってしまうものだが、3日断食しただけで「食」についていくつもの新しい発見が得られるのだ。

ココロもカラダも健康に

2大ストレス職業とも言える社長兼エンジニアである自分の重要なミッションは、常にココロもカラダも平静に保ち正しい判断ができるようにしておくことだと思う。えてして人間は他人の悩みを聞いているときは「なんでその程度のことでそんなに悩むんだろう」と感じたりするが、自分のこととなると「その程度のこと」でやっぱり悩みこんでしまう。それはきっと、絶え間なくココロに降りかかる不安やプレッシャーが、冷静な思考を奪ってしまい、客観的・合理的なジャッジができなくなってしまうためだろう。食もココロも負の無限ループから脱出して定期的にリセットしておくことで、ココロもカラダも健康に保っておくことはとても大切なことだ。

 

「断食の旅」、いかがだろうか? せっかく旅に出たのだから、現地の名産品を食べてみたくなるかもしれないが、日常から離れて何も食べずに2,3日過ごせる「贅沢」も、一度は味わってみてはいかがだろうか。きっと人生という旅を充実させるキッカケになるはずだ。また悩んでいたり疲れていたりする人は、大事な決断をする前に、騙されたと思って一度試してみることをお勧めしたい。いろいろな問題は意外と休むだけで解決してしまったりするものだ。

さあ、断食の旅にでよう。