【検証】フジテレビ低迷は地デジ化が理由!? そしてUIの重要性 #7

●フジテレビの謎の低迷が話題に

フジテレビが売上1位の座を日テレに明け渡したらしい。

日テレがフジを抜いて民放テレビ局売上トップ(マイナビニュース)

民放テレビキー5局の2015年度(2015年4月~2016年3月)決算が13日出そろい、持ち株会社でない単体の売上高で、日本テレビがフジテレビを抜いてトップに立った。フジは、1984年から31年にわたって守ってきた民放テレビ局売上トップの座を明け渡した。

我々80年代生まれにとってフジテレビといえばトップを走り続ける若者の憧れのブランドだった。そんな天下のフジテレビがどうして低迷に陥ってしまったのか、その理由についてはさまざまな憶測がなされている。新番組の不発、人気番組の弱体化、傲慢さ、チャレンジ精神の欠如、バブル文化、韓流推し、経営体制、編成体制、制作体制などなど、、例えば下記のような記事だ。

フジテレビ視聴率低迷、どうした?(毎日新聞)

それにしてもフジテレビだけがこうも急に悪くなってしまうものだろうか。もっと他のところに原因があるのではないか? そう、あくまでも推測にはなるが、実のところ本当の理由は「単に地デジ化によるチャンネル移動の影響」ではないかと思われる。いままで良好なチャンネル位置にあったフジテレビが、地デジ化によって一気に後方のチャンネルに移動したことで、4,5,6とリモコンを押しながら番組を選んでいた視聴者が、8ちゃんねるまでたどり着かなくなり視聴率の低迷を招いたのだ。あるいはテレビ番組表でも、一番右奥に移ったことで番組の存在が目に入りづらくなり、視聴者数が減ってしまったのである。これはあまりにも単純で底浅い議論に感じるためか、新聞記者や専門家にはあまり指摘されていないポイントだが、世の中のことは意外と単純である。ということで、今回は地デジ化によって各局の視聴率にどのような影響があったのか、データをもとに検証してみる。

 

●チャンネルはどのように移動したか

まずは地デジ化によってチャンネル位置がどうに変わったかをおさらいする。見てのとおり、フジテレビが大きく後退し、その代わりテレ朝が大きく前進している。

アナログ→地デジ化のチャンネル移動

 

●視聴率にどう影響しそうか

つぎにこの移動が視聴率へどう影響しそうかの仮説を立ててみる。前方あるいは中心に移動するほど有利とすれば、フジテレビが不利に、テレ朝は有利になりそうで、その他の局はそこまで大きな影響は無さそうである。

チャンネル移動仮説

ちなみに都道府県ごとにチャンネル位置は微妙に違う。まあそれでもフジテレビは8、TBSは6といったように関東に合わせているケースが多いため、ここでは気にしないことにする。
参考)フジネットワークの加盟局一覧|wikipedia

 

●地デジの普及ペースはどうだったか

いまやすっかり普及した地デジだが、どのように普及していったのか。業界団体の発表によれば、2011年までに地デジの普及率はほぼ100%となったようだ。(当時アナログ放送は2011年で停止するとされた)。特に2008年〜2011年頃に急速に普及していったようだ。

地デジの普及ペース

参考)地上デジタルテレビ放送受信機器国内出荷実績|jeita

 

●各局の視聴率はどう変わったか

いよいよ各局の視聴率の推移を見てみる。しかしスマホ人気の影響か、全体的に下降トレンドにあり、、各局の違いが分かりにくい。

各局の視聴率の推移

 
※下記のサイトを参考にさせて頂いた。もっと詳しく確認したい場合はこちらへ
参考)主要テレビ局の複数年に渡る視聴率推移をグラフ化してみる|ガベージニュース

 

●偏差値にしてみた

各局の相対的な好不調を明確にするために、偏差値の推移に直してみた。各6局の平均点が50であり、偏差値が高いほど他局に比べて好調だったと言える

各局の視聴率偏差値の推移

 

●やっぱりフジテレビとテレ朝に大きく影響!

フジテレビとテレ朝だけを見てみればこの通り!やはり地デジの普及に大きく影響を受けていることが見て取れる。フジテレビは2009年以降に大きく下降を始め、その後も下がり続けており、反比例するかのように、テレ朝は2009年頃より急上昇となり、普及率ほぼ100%となった2012年には遂にフジテレビを抜き去ってしまったのだ。

各局の視聴率偏差値の推移:フジテレビとテレ朝

 

●影響の少なかった他の局

その他の4局を見てみると、TBS,テレ東は若干の影響は見られるがそこまで大きな変化ではないようだ。日テレは大きく伸びているが、ライバルのフジテレビの低迷を追い風に1強としての地位を確立していったのかもしれない。

各局の視聴率偏差値の推移:NHK,日テレ,TBS,テレ東

ここに述べているのはあくまでも仮説に過ぎず確証が持てている訳ではない(できればアナログ・地デジに分けてそれぞれの視聴率を分析したりしたい)が、経営体制の問題やチャレンジ精神の欠如など、そんなに急に変わるものでもなかったりする理由よりは、チャンネル位置の変更という理由のほうが論理的に説得力を持つのではないか。

 

●結論:UIの重要性を再認識!

リモコン

この記事で特に強調したかったことは、テレビ業界の視聴率競争のことではなく、ただただシンプルにUIの重要性についてである。WEBやアプリの現場で長年ものづくりを追求してきた身からすると、UI設計はあまりにも重要で、このボタンを右に置くか左に置くか、数ピクセル大きくするかなど、ささいなことと思われがちなUI構成の判断に永遠と時間をかけて悩んだりする。

地デジ化によってテレビリモコンのチャンネル位置がほんの数センチ移動しただけだが、その移動はとてつもない(金額にすれば数百億円以上かもしれない)影響を与えた。UIの良し悪しは時としてコンテンツそのものよりも大きな影響をもたらすが、その重要性はそれほど認知されていない。数億円かけて作ったコンテンツも、数分のUI会議で台無しに出来てしまうのだ。つくり手としてはコンテンツへの思い入れが強くなるところだが、そのためにもUIが最高に使いやすいかの検討に十分な時間をかけるべきである。

これからの時代、スマホやタブレット、VRなど新しいタイプのコンテンツが溢れだし、視聴スタイルも流通方式も多様化するなか、数ある選択肢の中からユーザの注目を勝ち取るための鍵は、UIにある。

 

追記)ちなみにホリエモンも同様の指摘を行っていた。
フジテレビ急落はリモコンボタン8の場所が原因だ